熨斗は延寿に通じ、アワビは長寿をもたらす食べ物とされたため、古来より縁起物とされ、神饌として用いられてきました。奈良時代初期に編纂された肥前国(現在の佐賀県・長崎県)の風土記『肥前国風土記』には熨斗鮑 - のしあわび - についての記述が記されています。
また、中世の武家社会においても熨斗鮑は武運長久に通じるとされ、陣中見舞などに用いられていました。鎌倉時代に成立した日本の歴史書『吾妻鏡』には建久3年(1191年)に源頼朝の元に年貢として長い鮑(熨斗鮑)が届けられたという記録もあります。
仏教における熨斗は、たとえそれがお祝いごとであっても避けたほうが良いとされていましたが、最近では熨斗を付ける場合も見られるようになりました。
もともとアワビの肉を削ぎ、伸ばして乾燥させた熨斗鮑はやがて簡略化されアワビの代わりに黄色い紙が用いられるようになり、今では「紙のし」が一般的になっています。
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